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研究の目的

  本研究の目的はミャンマーのサイクロン減災対策の一つを確立することであるとともに、新しいタイプの技術移転を可能にする実学、設計科学としての地域研究の手法を社会実験により実践的に構築・実証することにある。
 2008年にミャンマーでは14万人の死者をだしたサイクロンNargisの悲劇が起きた。しかし隣国のバングラデシュではすでにサイクロンや洪水被害対策が、住民の経験と知恵によって減災技術として確立している。その一つが屋敷地造成である。地域に根差した「在地の技術」は、従来、地域に固有で文化や社会習慣の壁があり技術移転は困難であった。本研究では、両国のNGOと大学連携によって、屋敷地造成という減災の「在地の技術」を、バングラデシュからミャンマーに技術移転し、国を越えた社会実験に挑戦する。社会実験においては、現地住民と実施機関であるNGOのとの合意形成に特に配慮して事業を進めるものとする。


平成28年度の研究実施計画

研究活動1.ミャンマーでの屋敷地予定地で環境調査(12~3月)日本での定例会議(東南アジア地域研究研究所にて):5月に計画全体の打ち合わせ、それ以降は本研究終了時まで、東南アジア地域研究研究所の月例研究会時に合わせて研究打合せを行う。

研究活動2.ミャンマーでの屋敷地予定地で環境調査(12~3月) バングラデシュでの屋敷地調査(9~12月):バングラデシュでは二つのタイプの屋敷地がある。沿岸部タイプ(ベンガル湾の潮汐の影響とサイクロンの強風を受ける:ハティア郡)と内陸氾濫原タイプ(大河の氾檻原で2~3mの深湛水の洪水を受ける:カリハティ郡)である。ハティア郡ではNGO「DUS」の、カリハティ郡ではNGO「JRDS」の協力を得て、各郡で5集落から2名ずつインフォーマントを対象に調査を行う。Md.R. Rhaman(バングラデシュ農業大学)と安藤がNGOのスタッフ1~2名とともに男女各5名に対しPRA(参加型速成農村調査)を実施し、インタビューと観察記録としてベンガル語による屋敷地に関するる簡易報告書を速成でまとめる。最終日1日をかけてインフォーマント10名と村のNGOの事務所で参加型ワークショップを開催し、間違いや調査もれを修正して最終報告書を決定する。それをRahmanが英語翻訳した報告書「屋敷地のサイクロン・洪水の減災機能と造成方法」としてまとめる。
 安藤のバングラデシュヘの出張:9~12月の間の2週間(調査の実施)。

研究活動3.ミャンマーでの屋敷地予定地で環境調査(12~3月):ミャンマーではNGOのFREDAの協力を得て、FREDAの活動地域の集落において屋敷地造成を行うが、造成前には集落において既存屋敷地の構造や生態特性について男女各5名に対しPRAを実施し、ミャンマー語による簡易報告書を作成する。参加型ワークショップによって、報告書内容を修正する。Khin Lay Swe(FREDA)が英語翻訳し、報告書「ミャンマーの既存屋敷地の構造とサイクロン減災機能」を作成する。
 安藤、大西信弘(連携研究者、京都学園大学バイオ環境学部)、竹田晋也(連携研究者・京大大学院ASAFAS)、赤松芳郎(研究協力者・京大東南アジア地域研究研究所)、岡田夏樹(研究協力者・京大大学院ASAFAS)のミャンマーへの出張:平成28年12月~29年3月上旬2週間(調査の実施)。


平成29年度の研究実施計画

研究活動4.

バングラデシュでの屋敷地の減災機能と造成に関するワークショップ(4月):研究活動2の活動結果を受けてハティア郡のDUSの事務所においてハティア郡でのインフォーマントと安藤、Rhaman、JRDSのAkkel、ミャンマーのFREDAから1名のスタッフの参加により、造成方とその機能に関する最終報告書にもとづき、参加型ワークショップと周辺の屋敷地のスタディツアーを実施する。
 安藤のバングラデシュへの出張:4月上旬1週間(ワークショップ参加)。

研究活動5.ミャンマーでの屋敷地の造成(4月~6月):FREDAの活動集落において、屋敷地造成のための説明ワークショップを開催し、上記二つの報告書を村人に発表し、集落内でのコンセンサスを形成し、集落農民を造成作業に参加してもらうボトムアップ式で造成する。FREDAの協力を得た屋敷地造成事業の全過程を、FREDAのスタッフと村人の協力を得て、議事録をミャンマー語で作成し、Khin、岡田、赤松が「屋敷地造成記録」の報告書にまとめる。屋敷地造成はFREDAが中心となり実施する。4,5,6月での完成を予定している。
 安藤、岡田のミャンマー出張:4月上旬2週間(ワークショップに参加)。ただし安藤はバングラデシュの出張から継続して1週間のみ合流。岡田、赤松のミャンマー出張:6月下旬2週間(造成の最終確認と記録編集)

研究活動6.最終報告会を兼ねた屋敷地利用計画ワークショップ:屋敷地造成が完成し、その後の利用計画についてワークショップをプロジェクト終了報告会として開催し、FREDAと村人との利用に関するコンセンサスを作る。そして、今後の利用や実際のサイクロン時の減災効果に関する「社会実験」の継続準備を行う。
 
安藤、竹田、大西、岡田のミャンマーへの出張:平成29年12月~平成30年3月の10日間(ミヤンマ一ワークショップ参加)。







屋敷地造成マニュアル








萌芽研究最終報告書 (2018年6月)







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