1. 研究の目的

2. 農村の現状と課題

3. 課題に対する取り組み

4. 研究の実施体制
5.
実施場所
6.
アクションプログラム(活動)


 


研究の目的

 アジアの農村には地域に根ざした個性豊かな文化がある。しかし、経済発展に偏った近代化による既存の農村開発はこの個性を否定してきた。世代を超えて受け継がれてきた文化や歴史を安易に否定したことが、「村に暮らす誇りや生きがい」を奪い、人々の精神的な結束を弱めてきた。その結果、農村の高齢化や過疎化が進み、農村社会は崩壊の危機的状況となっている。本研究は、経済発展による農村開発に対し、個性豊かな文化や歴史を重視する新しい「農村発展モデル」を実践型地域研究の方法論(文献1)を使ってラオスにおいて実証する。そして、実践型地域研究が農村開発という実践的課題に充分対応しうる学問的手法であることを示すのが本研究の目的である。

(平成25年度(2013年度) 基盤研究(B)(海外学術調査)研究計画調書 平成24117日 2)

 


農村の現状と課題

 

 戦後の経済成長と生活の近代化により、日本の農村では電力、水道、道路などの生活インフラと初等中等教育の充実が図られ、都市とほとんど変わらない生活水準となった。しかし、農村と都市との経済的格差の拡大は都市への人口の流出を招き、現在、日本の中山間農村は高齢化と過疎化による地域社会の崩壊の危機を迎えている。そのような中で、農具や民具などを収集展示する集落民俗資料館を設置し伝統文化を保存するとともにツーリズムを促進し地域社会の再生を目指す模索が行われている(京都府南丹市美山町かやぶきの里ほか)。

 一方、アジアの農村に目を向けると経済成長と近代化による農村開発がまさに進行中である。まるで日本の農村の後を追うように、都市と農村の経済的格差の拡大に加え農村での教育機会の低さは、都市への人口流出を加速している。農村からは働き盛りの若者の姿は消え、老人と子供の姿が見えるだけとなっている。過疎と高齢化はすぐそこに迫っている。本研究を実施するラオスにおいても、雇用や収入向上及び高等教育の機会を求める人々の都市への移動が加速している。

以上のように、アジアの農村においても日本の中山間農村が直面する高齢化と過疎が進み、地域社会の崩壊が現実として危惧されている。

本研究では、この課題の軽減のためには、収入向上による農村開発に加え、人々の農村に暮らす喜びを再認識し誇りを持つことが重要であると考え、以下に示すアクションプログラムを実践型地域研究の手法で実施するものである。

1.  生業・生活の道具、在地の知恵・技術、伝統文化や歴史を地域の記録として残す。

2.  村人・教育研究機関(大学)・行政の協働及び相互学習を通して課題軽減を目指す。




課題に対する取り組み

  この課題の解決のためには、これまでの収入向上の取り組みに加えて、農村に暮らす喜びと誇りを育てることが求められていると考え、以下に示すアクションプログラムを実施する。(Web)
 ž生業・生活の道具、在地の知恵・技術、伝統文化や歴史を記録し残すことを通して、世代を超えて地域に受け継がれてきた伝統文化や歴史を再認識し、農村に住む「ほこり」と生きがいを取り戻す。

日本の失敗に学び経験を活用するための国際交流による相互学習を通して、村人・教育研究機関(大学)・行政の協働による課題解決を目指す。
実践型地域研究の手法で以上の課題に取り組む。(実践型地域研究ホームページにリンク)




研究の実施体制

本研究は以下の機関の関係者が参加協働し実践方地域研究手法で実施する。


実施機関

ž  京都大学東南アジア研究所地域情報ネットワーク部実践型地域研究推進室(Web
žラオス国立大学農学部研究調査室&ラオ農民伝統農具博物館(Web

ビエンチャン特別市サイタニー郡タチャンパ村&集落民俗文化資料館(Web


 実施においては、日本国内では亀岡市文化資料館
(京都府亀岡市)、知井振興会(京都府南丹市美山町)、ラオスではサイタニー郡役所をはじめとする地方の行政機関の協力を得ている。




   


   ラオ農民伝統農具博物館            タチャンパ集落民族文化資料館


 

 

実施場所


ビエンチャン特別市サイタニー郡バクサップマイ村(農学部)及びサイタニー郡タチャンパ村で本研究を進めている。タチャンパ村は、ビエンチャン特別市サイタニー郡の北東部のナム川の北岸に位置し農学部から約10km、ビエンチャン市街から40kmの距離にある。

   


     



アクションプログラム(活動)

本研究では以下のアクションプログラムを実施している。


1. ラオス国立大学農学部ラオ農民伝統農具博物館プログラム

ž   伝統的農具・民具の収集と展示

ž   収集品の整理とデータベースの作成(インベントリー・カタログ作成)

ž   博物館の維持管理・活用のための能力向上

2. タチャンパ村集落民俗文化資料館プログラム

ž   文化資料館の維持管理と活用(村の民具・農具の収集展示)

ž   公民館の運営を通した住民参加による集落振興と行事の開催

ž   村の伝統文化・歴史の住民参加による記録保存と再認識支援

  3. 国際交流と相互学習プログラム

ž 日本における研修とスタディツアー

ž 国際草の根ワークショップ参加と国際交流

 




     Top     English