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      Journal of Agroforestry and Environment 


背景(研究の流れ)

 1980年代中ごろから京都大学東南アジア研究所は、実践と研究を統合したアクション・リサーチを実施してきました。それが、JICA (国際協力事業団)の二つの研究協力事業「バングラデシュの農業・農村開発研究」(1986-90年度)とそれに続く「バングラデシュ農村開発実験」(1992-95年度)です。その後バングラデシュ農村開発公社が実施機関となって参加型農村開発プロジェクト(PRDP)のパイロット事業が1期5年間、JICAによって2期実施されました。PRDPはバングラデシュ農業公社がパイロット事業終了後も継続し,JICAも個別派遣専門家,青年海外協力隊員派遣により現在も支援を継続しています(海田能宏(編)2003『バングラデシュ農村開発実践研究―新しい協力関係を求めて』(コモンズ))。
 
  2008-12年度には、京都大学生存基盤科学研究ユニットの生存基盤科学におけるサイト型機動研究」が実施され、東南アジア研究所は滋賀サイトにおける機動型研究の一つとして、「在地と都市がつくる循環型社会再生のための実践型地域研究」を立ち上げました。この実践型地域研究を推進するために、2008年度には実践型地域研究推進室が設置されます。そして、滋賀県の守山・朽木、京都府の亀岡のフィールド・ステーションを運営するとともに,行政やNPOなど地域で実践活動に従事している人々と連携てアクション・リサーチを展開してきました。

 また、文部科学省委託事業「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」で、「南アジア周辺地域の開発と環境保全のための当事者参加による社会的ソフトウェア研究」(2007-09年度)を実践型地域研究として実施しました。バングラデシュとネパールで環境問題や農村開発に取り組んでいるNGOの当事者的な直観的把握を総合化するプロセスとして、社会的ソフトウェア作成にアクション・リサーチとして取組んだのです。参加型農村調査における学習と実践(PLA)手法とKJ法を改良し、さらに参加型ワークショップを組み合わせることにより、実践者の直観を分析的に表現しながら相対化するツールとしての社会的ソフトウェアを開発したのです。
 
 基盤研究A(海外学術調査)「ベンガル湾縁辺における自然災害との共生を目指した在地のネットワーク型共同研究」(2009-13年度)、トヨタ財団アジア隣人ネットワークプログラム「農村文化・歴史を重視するアジア農村発展モデルの提唱―アジアの開発途上国と日本の実践的ネットワーク構築による農村文化再創造活動」(2008-09年度)、京都大学地域研究統合情報センターの地域研究方法論プロジェクト「アジアと日本を結ぶ実践型地域研究」(2012-15年度)では、さらに国や地域の違う参加者たちの相互啓発を重視した実践型地域研究としての手法的確立を目指してきました。基盤研究Aでは、バングラデシュ農業大学・ミャンマーのSEAMEO-CHATとイェジン農業大学・ブータン王立大学シェラブッチェ校やNGOのDUS(バングラデシュ)、FREDA(ミャンマー)などと2010-13年度の毎年にわたって「社会的ソフトウェア」方式のワークショップを実施しました。それらの発表論文は、Journal of Agroforestry and Environmentの特集号として、2011年と2012年に掲載されました。さらに、バングラデシュとミャンマーから英文による実践型地域研究シリーズ(Practice-oriented Area Studies Series)が発行されています。第2巻(2011年)は、イェジン農業大学で行った国際ワークショップの論文集です。国内では、2010年度から毎年「文化と歴史そして生態を重視したもう一つの草の根の農村開発に関する国際会議」を阿武町,京丹後市,大豊町などで開催し,発表集が報告書として刊行されています。

 京都大学の文部科学省「地(知)の拠点整備事業」である「京都大学KYOTO未来創造拠点整備事業―社会変革期を担う人材育成」(2013-17年度)では当研究室が中心となり、プログラム「アジアと日本の農山村問題を相互啓発実践型地域研究で学ぶ」を実施しています。これは離村・高齢化による過疎化・離農問題を日本のみならずアジアのグローバル問題と位置づけ、京都府南丹市美山町知井地区と東ブータンを拠点として、地域再生への社会貢献を視野にいれたアクション・リサーチであるとともに、京都大学の学部生教育でもあります。萌芽研究「新しい在地の文化形成による現場型農村開発モデル」(2014-15年度)と、研究大学強化促進事業学際・国際・人際融合事業「知の越境」2014年度 融合チーム研究プログラム―SPIRITS―「ミャンマーのサイクロン・洪水災害の減災―バングラデシュでの成功事例を応用するための取り組み」では、積極的に農村開発や自然災害の問題をグローバル問題として、実践型地域研究の課題に位置付けています。グローバルな問題こそローカル(在地)から取り組むという姿勢を維持しながら、アクション・リサーチによる実践的な問題克服の糸口を発見していく地域研究手法の開発に挑戦しているのです。




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