東南アジア研究の国際共同研究拠点 International Program of Collaborative Research
拠点集中型 平成26・27年度 (FY2014・2015)
京都大学東南アジア研究所 IPCR 2014 東南アジア研究の国際共同研究拠点 INTERNATIONAL PROGRAM OF COLLABORATIVE
RESEARCH P.11 からの転載
本研究は、平成26-27年度の計画で 、高知大学、京都学園大学、ブー タン王立大学シエラブッチェ校、パンクラテシュ 農業大学 、ミャンマ ーのSEAMEO-CHATなどの協力を得て実施されています。農山村の過疎・高齢化と離農の問題は
、経済発展を遂げた日本のような国で顕著であると思われがちです。しかし、現在、ブータン、バングラデシュ、ミャンマ一、ラオスといったアジアの開発途上国でも程度の差こそあれ、この問題が顕在化しつつあります。本研究では、日本における現状をアジア的視野で相対化しながら、「問題の解決のためには、農山村をこれまでのように都市化することを目指すのではなく、その個性を生かした新しい文化の創生活動こそが有効である」ことを明らかにします。そのために、内外の研究者による農山村の現状の比較調査を行うとともに、地域住民や地域に関わるNPOを巻き込んだ実践型の地域研究を実施しています。従来型の対象の観察を通じた現状分析ではなく、「そこに住んでいる人々が主体となって参加する実践計画」の実施を通して、人々の反応やプログラムの有効性を明らかにしながら、単なる都市化とは異なる新たな農村開発モデルの確立を目指しています。 |
学術的背景
日本の農山村では、農業離れ、過疎・高齢化などにより、耕作放棄地や放置人工林の増加、コミュニティ機能の低下などが問題となっています。その結果、地域に固有の伝統芸能、食文化、棚田などの農耕地、農耕技術、林野などを含めた土地利用、慣行による灌漑水利施設の維持等々からなる農村文化が、消滅の危機を迎えています。この問題に対してこれまでの施策は、農山村を都市並みの経済的収入が得られ、効率的に生活できる場に転換しようとするものでした。しかし、現状から明らかなように、この施策の成果はあがっているとは言えません。 |
氏名 | 専門 | 役割 | 共同研究機関 | 国内調査村(特徴) | 国外調査村(特徴) |
安藤和雄 | 農村開発・農村社会 | 代表・調査村での調査実施とPRA、PLAの総括、研究例会等の事務局 |
国内:知井振興会、美崎自治会、NPOもやいネット 国外:ブータン王立大学シェラブッチェ校、バングラデシュNGO(DUS) |
京都府南丹市美山町(限界集落) 滋賀県守山市美崎(河川環境問題) |
ブータン(カリン郡:過疎・栽培放棄) バングラデシュ(ハティア郡:自然災害・環境保全) |
大西信弘 |
環境保全・農村開発 | 調整、調査村での調査実施と招へい研究者の調整と手続き | 国内:保津町自治会、NPOプロジェクト保津川 国外:ミャンマー・マンダレー大学 |
京都府亀岡市保津町(都市近郊農村、環境問題) | ミャンマー(インレー湖、マンダレー周辺農村:農業環境問題) |
鈴木玲治 | 伝統生業システム | 調査村での調査実施、ワークショップの準備 | 国内:NPO火野山ひろば 国外:ミャンマー林業大学 |
滋賀県余呉町(焼畑のオン・ファーム実験による森林再生) | ミャンマー(パゴー山地:焼畑生業システム) |
市川昌広 | 過疎・離農問題 | 調査村での調査実施、アクション・プランのとりまとめ | 国内:怒田集落自治会 国外:マレーシア・サラワク大学 |
高知県大豊町怒田(棚田、段畑と耕作放棄地の再生) | マレーシア(ミリ地方:離村と農業問題) |
研究方法 |
国内外の調査地では、いずれも研究者が現地の共同研究機関とともに海外では調査を主に、国内では実践活動を主にそれぞれの研究活動を進めてきました。これらの経験を生かし、研究参加者が現地のコーディネータとなり、農村住民や現地共同研究機関の関係者を10名前後のメンバーからなる調査研究チームを組織化します。そしてPRA(参加型主体的農村調査)により、各村の抱える問題をケーススタディとして明らかにします。各共同研究機関からのカウンターパートならびに本研究参加メンバーによる参加型ワークショップを開催し、ケーススタディの成果をPLA(参加型学習と行動)の観点から議論し、アクション・プランを最終的に作成します。従来、地域研究や農村開発研究においては、アジア諸国と日本の関係者がチームを作り、アジア諸国と日本農村を共同で調査研究し、相対化する試みはほとんど行われてきませんでした。本研究では、後退を余儀なくされている日本の農山村再生に海外研究の知見を活かしていくために、この研究手法を試みています。最終的な成果のとりまとめについては、プロジェクト全体で参加型ワークショップによって、各調査地のケーススタディとアクション・プランの相対化と修正を行います。そしてキー・クエスチョンとそれに対応する優先順位をつけたアクション・プランの事業計画集を作成していきます。本研究終了後にはその成果に基づき、各調査地で問題解決を具体的に追求するアクション・リサーチを実施していく実践型地域研究の展望を描いています。
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研究計画 |
2年間の研究計画を実施月と主な研究活動ごとに下表に示します。 |
年度 | 実施月 | 主な研究活動 |
平成26年度 | 8月上旬1週間 | 国外調査地でのPRAによる問題点の把握 |
10月中旬1週間 | 各国カウンターパートによるPRAの成果報告会を京都で開催 | |
10月下旬1週間 | 各国カウンターパートの美山町と他の国内調査地でPRA | |
平成27年度 | 8月上旬1週間 | 国外調査地にて国内調査地の比較検討と補足調査 |
10月中旬10日間 | 各国カウンターパートを国内に招へいし、国内調査地でPRAを行う | |
10月4日間 | 各国カウンターパートと日本参加者が京都に集まり、アクションプラン作成のためのワークショップを開催する | |
2月下旬(H28年) | 最終報告書・アクションプラン集の作成 |
ワークショップ |
「持続的発展に向けた環境問題とその減災の可能性」国際ワークショップ(20160206) |
成果刊行物
Paper Collection of Unknown Contemporary Issues for Sustainable Environmental
and Rural Development in Myanmar: Highlighting Collaboration with Bangladesh,
Bhutan and Japan |