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 はじめに 

 本共同研究は、「緑の革命」というグローバリゼション以降の東南アジア大陸部稲作圏で起きている農業技術変化を比較検討し、地域の固有性が地域の発展とこれまでどう関わり、またそれが今後の発展の土台としてどう活きるのかを考察するものです。
 このウェブページは比較農業研究会(Comparative Study on Agricultural Technology : CSAT)が管理・運営を行っています。


               研究の目的
                                                             東南アジア大陸稲作圏の国々では食糧自給をほぼ達成しました。そのため、「農業技術開発」と「普及」および「農村開発」は、国家戦略としての優先順位が下がっています。つまり、政府による農民への「技術の押し売り」が消え、近代農業技術の画一的な普及は影を潜めています。その一方で、国によっては、農民の自発的な技術変革が見られるようにもなってきており、伝統農業時代に存在した「地域による多様性」が再び出現しつつあるとも言えます。また、世界の農業技術も、多収技術から持続性、安定性、安全性、低投入技術へと移り、脱化学農業の動きも活発で、機械化農業についても、各地域では大変ユニークな展開が起きています。このような変化を地域発展の国際的な共時的現象として捉え、地域の固有性と農業技術発展の関わりを明らかにすることが本共同研究の目的です。

 



研究の意義

 近年、特に2000年以降、地域研究およびそれに隣接する分野の諸研究において、農業技術の現状を具体的に記述し、その変容の意義を問う研究事例がほとんど見られなくなってきました。これは「緑の革命」という東南アジア諸国に共通した農業・農村開発国家戦略が主政策でなくなりつつあることに関係しています。しかし、そのような状況下であるからこそ、東南アジア各国では、国家の圧力から放たれた農民の自由意志による近代と伝統の統合によるもう一つの技術革新、あるいは「もう一つの緑の革命」が静かに進行していると言えるのです。まさに東南アジア大陸部では、地域の固有性に強く立脚した農業技術発展がその多様性を大きく開花させつつある と言えます。しかし、このことは現在までほとんどまとまった形で報告されてきませんでした。本共同研究では、その現象の実態と現代的意義を明らかにし、それにより、地域研究に携わる研究者コミュニティと東南アジアの人々とともに、将来の農業技術のあり方について考えるという大きな意義を持つものです。

 



期待される成果

 本共同研究では、東南アジア大陸部稲作圏における「緑の革命」以降の技術変容を明らかにします。そこからは、農業技術の変容には地域の固有性が強く働き、グローバル化や国家による上からの政策一辺倒ではなく、農民の主体性に立脚した多様な発展のありかたが浮かび上がると期待できます。それは、市場経済のグローバリゼーションによる画一的な地域発展の弊害を克服していく、具体的なヒントを示すものとも期待できます。世界は再び個別的発展を望む方向に確実にシフトしつつあります。それが世界が共存していく基本原理であることを、地域研究からの新しい提言として提出します。

 

研究の実施計画

 本共同研究では、総括班と国別班からなる研究チームを編成します(表参照)。
                                           

総括班   浅田晴久・Guy Trebuil・安藤和雄
国別班 Guy Trebuil (CIRAD: Agricultural Research For Development 仏):タイ
 ネイト:タイ
松田正彦(立命館大学):ミャンマー
 小林知(京都大学東南アジア研究所):カンボジア
柳澤雅之(京都大学地域研究統合情報センター):ベトナム
小坂康之(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科):ラオス
浅田晴久(奈良県立女子大学):インド・アッサム
安藤和雄(京都大学東南アジア研究所):バングラデシュ・日本
内田晴夫(京都大学東南アジア研究所):バングラデシュ
赤松芳郎(京都大学東南アジア研究所):ブータン



 各国別担当者が、各自のカウンターパートとともに行ってきた研究成果をもちより、定期的な研究会を東南アジア研究所で開催し、20172月には宮津市で一泊合宿研究会を予定しています。合宿においては原稿を持ち寄ってそれを発表し、一年目にドラフトを日本語で書き、二年目である2017年度は、Guy氏を4月もしくは5月から半年間招へいし、それに合わせて、メンバー各自が英語による発表を行い、9月には英語の担当章の最終版をまとめる予定です。また、本共同研究者をコアメンバー、海外のそれぞれのカウンターパートをアソシエーション・メンバーとして、英語によるメーリングリストを運営して議論を促進し、現地カウンターパートからのコメントや事実確認をよりスムーズな形で成果に取り込みます。英文校正と編集はGuy氏に全面的に協力を要請します。

 



研究成果の公開計画

1)Webサイトでのホームページによる発信

2)IPCR-CSEASの年次大会による発表。日本地理学会、日本熱帯農業学会、日本生態学会、東南アジア学会等の各種学会、研究会での発表。

3)図書:招へい研究者のGuy氏の東南アジアに関するこれまでの研究実績にもとづいた、東南アジア大陸部の農業近代化以降におきた技術変容、特に2000年以降の実態に関する総括的な著書、及び参加者のこれまでのフィールドワークの実績と本共同研究の成果にもとづき、国別のケースを国際比較する各章を分担執筆し、代表者らが編集する共同研究課題名をタイトルにした英文の編著書の出版をめざします。



研究・打ち合わせの記録と資料


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